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【ウェディングストーリー】結婚準備はジェットコースター

投稿日:2017年1月14日 更新日:

急遽、付き合って10年となる節目に結婚式を挙げることになったカップル。
担当の女性ウェディングプランナーが奮励する姿をリアルに描いています。

 

「今から3カ月後に、どうしても式を挙げたいんです」。

初対面でそう強く言い切ったふたりに、他の選択肢を提案できそうな気配はない。

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「3カ月後、私たち付き合って10年になるんです。その節目にどうしても式を挙げたくて……」。

花嫁となる女性が申し訳なさそうにそう付け足した。それから少し話しを聞いてみると、どうやら普段のふたりはとてものんびりしたカップルのようだ。付き合って結婚するまでに、10年ものあいだ愛を温めてきたことも頷ける。気づけば3カ月後に10年記念日が迫っていたということで「ここでしないとまた数年間タイミングを逃してしまう」と半ば強制的に結婚に踏み切ったとのことだ。

「実現する方法を、今すぐ一緒に考えましょう」。

ウェディングプランナー歴5年の茜は、穏やかな笑顔を見せてそう答えた。

“ルール3:お客様からのご要望を、頭ごなしに否定する接客はありえない”

「一生ウェディングプランナーとして生きていく」。そう決意した時に自ら定めたウェディングプランナーとしての“マイルール”を、茜は今でも忠実に守っている。ルールは今の所全部で15個あって、他には

“ルール1:1に笑顔、2に笑顔、3・4でも5でも、とにかく笑顔”

“ルール7:お世辞は言わない、言わせない”

“ルール10:信頼関係は1度の失言でゼロになる”

などがある。それらはすべて、ウェディングプランナーとして5年間キャリアを積んできたなか、茜なりに失敗を繰り返してきた結果導き出したものだ。マイルールを作るようになってから、ウェディングプランナーの仕事をより楽しめるようになった。

幸い、ふたりが希望する3カ月後に式場の空きが見つかった。その場で予約を抑えると、茜はふたりにこう告げだ。

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「いいですか。これからおふたりが過ごす3カ月間は、ジェットコースターそのものです。一気に進んだと思っても、実はその先にまだ急降下が待っていたり、スピードが落ちたと思っても急に加速を始めたり。ジェットコースターに乗っているかのように目が回る毎日になることを、まずはしっかりと覚悟しておいてくださいね」。

真面目な顔をしてふたりにこう伝えた後、くしゃっと顔を崩してこう続けた。

「でも安心してください。3カ月後、おふたりは最高に幸せな笑顔を見せていますから。3カ月間、一緒に頑張りましょう!」

茜の言った通り、ふたりの結婚準備の3カ月間はまさにジェットコースターそのものだった。

結婚の日取りを決めて1週間で招待するゲストの顔ぶれを決め、招待状を作成して送付した後は式の大まかな流れを決め、衣裳選びに会場装飾選び、コース料理の決定が終わったかと思えば、プロフィールムービーの作成や席札・席次表の作成、親族が泊まるホテルの手配から当日の着付けとヘアメイクの予約、二次会の打ち合わせ、引き出物やプチギフト選び、花嫁の手紙や新郎あいさつのセリフ決めなど、息切れしてしまいそうな程毎日やることが盛りだくさんだった。

でも不思議と、カップルのふたりは結婚式当日まで疲れた素振りを見せることはなかった。

遡ること2度目の打ち合わせの時、茜はあることをふたりに提案していた。

「どの道忙しいことに変わりはない結婚準備。どうせなら、あえてそれを利用して思いっ切り楽しみませんか?」

まだ2度目の打ち合わせにして、すでに疲労でスタミナ切れを起こしそうなふたり。10年間のんびりしてきたカップルだ。無理もない。そこで茜は、“今日のふたり”を1日1枚撮影して毎日LINEで茜に送付することを提案した。“今日のふたり”が結婚準備で大変に感じたことをポジティブ転換してひと言添えるというルール付きだ。

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ただでさえ忙しいのに、これ以上仕事を増やすというのか……と驚きの表情でこちらを見つめるふたりのことなんてお構いなしに、茜は続ける。

「例えばその日、席次表を考えていて頭がパンクしそうになったとします。そういう場合には“あー席次表作るのって楽しい! だってこんなに時間をかけたんだから、当日のゲストはその席にきっと満足するにきまってるんだから!”と言った具合です。そしてどうしてもポジティブに変換することができなかった場合は、私に考えさせてください」。

“マイルール15:カップルを元気にすることも、ウェディングプランナーの仕事”

準備に追われ、式当日には疲れ切って結婚式を100%で楽しめなかったカップルを茜は何度となく見てきた。そんな状況を変えたいと思って定めたのがこれ。ふたりをやる気にさせるのも、疲れたままにするのも、ウェディングプランナーの力量にかかっていると茜は信じている。

「今日の一枚。ドレスの試着って本当に楽しい! 彼は何を見ても“かわいいね”というだけで、正直物足りなかったんですが……そんな彼だからこそ、激しく衝突することなく平和な毎日を過ごせているんだと思います」。

「今日の一枚。席札への手紙を書いていて終わりが見えない……でもそれだけ感謝を伝えたい人たちがいることって、ありがたいことですね」。

「今日の一枚。ふたりのプロフィールムービー完成! 10年前の写真を探すのにかなり時間かかったけど、当時のふたりを見て、初心を思い出すことができました」。

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それからのふたりは、忙しくも毎日“今日のふたり”の実況中継をポジティブにして茜に送ることで、ジェットコースターのような結婚準備の日々を乗り切っていった。

そして式の前日、茜はそれまでにふたりから送られてきた写真を一つのアルバムにしてプレゼントした。思いがけないプレゼントにふたりはとても喜び、翌日の式を絶対いいものにすると茜に誓った。

今、茜の目の前には、披露宴会場への入場を待機して並んでいるふたりがいる。挙式を終えて晴れて夫婦となったふたりは、それまでの緊張も幾分か和らいでリラックスしているように見える。そして3カ月前と比べて、少したくましくなったようにも感じる。

「それでは皆さま、もうじきお色直しを終えた新郎新婦が再入場いたします!」

ドアの向こうから、司会者がふたりを紹介するアナウンスが聞こえた。

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「この3カ月間、本当にお疲れさまでした。残りの時間も、思いっきり楽しみましょう! さぁ、行ってらっしゃい!」

そう告げて、披露宴会場のドアを勢いよく開く。会場中に拍手の音が響くなか、満面の笑顔でふたりは足を進めていく。

「このジェットコースターのような3カ月が、あのふたりにとってかけがえのない記憶となり、この先の結婚生活を支えてくれますように」。

茜はそんな事を願いながら、共に歩んでいくふたりの後ろ姿を優しく見送った。

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