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【ウェディングストーリー】ウェディングプランナーの休日

投稿日:2017年1月16日 更新日:

結婚式をつくりあげる“ウェディングプランナー”。
休日はどのように過ごしているのでしょうか?
あるプランナーの休日の物語です。

休日1

「あ、これ可愛い」。

ショーケースに並んだ外国製のレターセットを前にふと足をとめる。

「こういうので招待状作ってもいいかもな。もう少し重厚感出すためにふちに装飾を足して……」。

カシャ。

慣れた手つきでスマホを取り出し、その素敵なレターセットをデータ化する。そしていつものように「Stock」というフォルダに放り込む。

「今度雰囲気が合いそうなカップルがいたら提案してみよう」。

まだ見ぬ出会いを想像して心が弾む。

ウェディングプランナー歴5年、佳奈子26歳。今日は数カ月ぶりにゆっくり過ごせる、完璧な「オフ」だ。つい最近まで結婚式を挙げるのに人気のシーズンが続いていたため、こうしてのんびりと過ごせる休日は本当に久しぶりだった。

だから佳奈子は「何もしない」と決めていた。

これまで色んな情報をインプットしすぎていたから、空っぽにしてリフレッシュしようと思ったのだ。街をゆっくり歩き、ショーケースを眺め、気になったお店が入ればぷらりと立ち寄る。気ままに、心の向くままに過ごす1日だ。

「あ、このラテアート可愛い」。

休憩がてらに入ったカフェで、スマイルマークが描かれたカフェラテに目を細める。

カシャ。

そのまま「Stock」フォルダへと移動する。

「コース料理の最後のスイーツに、こんなスマイルマークがあったらきっとみんな喜んでくれるんじゃないかな」。

自分が結婚式のゲストになった気分で、コース料理の最後にスマイルマークが出てくることを想像する。

「うん。やっぱり私だったら嬉しいかも」。

ひと通りイメージを終えて、これも結婚式のアイデアとして使えると確信する。

ひと息ついてぼーっとしていると、今朝家を出てから今まで、何か新しいものに出会うたびにウェディングのことばかり考えている自分に気がつく。

「今日は結婚式から離れるためのオフなんだけどな」。

フッと自嘲ぎみに鼻で笑い、結局ウェディングのことばかり考えている自分を認める。

休日3

ウェディングプランナーになって5年。最初の内は無我夢中で目の前のやるべきことをこなしていた。覚えることが多く、毎日が新しいことの連続で、忙しくも充実した毎日を送っていた。

3年目に入った頃から、仕事にもだいぶ慣れ、カップルとじっくり向かい合う、寄り添うプランニングができるようになってきた。今では後輩が5人もいる。気づけば、あっという間に今の会社のウェディングプランナーの中で中堅どころになっていた。

3年目〜5年目までは、カップルとじっくり向き合うスタイルで仕事に取り組み、そこでも色んな学びがあった。結婚式を挙げる意味、家族と家族が結ばれる幸せ、祝福と感謝が飛び交う空間の仕立て、プランナーとして何度も結婚式を経験してきたが、佳奈子は結婚式に飽き足りることはなかった。

そして6年目に入ったころから、少し佳奈子の心に変化が現れた。

「私の介在価値って何なんだろう」。

プランナーとしてたくさんのカップルに関わってはきたが、果たしてそれが「自分でなくてはいけない」ものだったのか、そして今現在も進行中のカップル達との打ち合わせを終えた後も、そう自問自答を繰り返す毎日だ。

それまでは、バリエーション豊富な提案力を身につけることに必死だった。カップルに、経験豊富だと思われたかった。だから毎日結婚式のことを考えていたし、毎日新しいアイデアを探していた。佳奈子のスマホの「Stock」フォルダの画像枚数は、すでに1,000枚を超えている。

でも6年目に入ってからは、「私でなければいけない」意味を考えるようになった。誰か別のプランナーでも代わりがきくような仕事から、私にしかできない仕事って何だろうと思う毎日だ。

未だ、答えは見つかっていない。

休日4

“LIVE YOURSELF”

カフェを出て街歩きを続けていると、大きな看板に描かれた文字が目に入ってきた。

導かれるようにして看板の前まで足を運び、しばらく足をとめる。

“LIVE YOURSELF”

高層ビルが並ぶ景色を撮影した写真の空に、シンプルに、でも力強く書かれたその文字から目が離せない。

「自分らしく生きろ、か―――」。

佳奈子はまた、今までの自分のウェディングプランナーとしての仕事を振り返っていた。カップルの希望を聞き、それを実現するために、確かに頑張ってきた。「あなたがプランナーで良かった」。そんな言葉もたくさんいただいてきた。

「でも、そこに、私らしさはあったのかな?」

“カップルの要望に応えることがゴールになってはいなかったか?”

そう聞かれると、自信をもって「私らしさも盛り込んできた」とは応えられない自分がいた。

視線を上げ、もう一度看板に書かれた文字を見つめる。

“LIVE YOURSELF”

佳奈子は、6年目に入ってからずっと悶々と抱えていた心の雲がスーッと消えて、太陽の光が注がれたような晴れやかな気持ちになっていくのを感じる。

「今度の打ち合わせでは、イエスだけじゃなくて私の意見も言ってみようかな」。

今までの相談スタイルを変えてみよう。

佳奈子はふとそう思った後、からだの内側からじわじわとパワーがみなぎってくるのを感じた。

「今日のオフ、終わりにしよう」。

佳奈子は「何もしない」と決めていたオフを早々に切り上げ、スマホに入っている「Stock」フォルダの画像たちに、自分なりのテーマをつけてみることにした。

「テーマをつけた後は、今進めている案件に合うものがないか自分なりに仕分けしてみよう」。

何となく撮りだめていただけの1,000枚を超える画像が、佳奈子の前で一気にキラキラと輝きだす。

休日5

そう決めると、佳奈子は迷わず自身が働く式場へと足を向けた。

ウェディングプランナー6年目、佳奈子が抱く結婚式への情熱は、まだまだ冷めそうにない。

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