人間の脳は、常に目標達成をしたがっている
本論に入る前に、「脳は常に目標達成するための証拠集めをしている」というお話をしたいと思います。
ダイエットをしようと決心して、スポーツジムに通い始めた人をイメージしてみてください。最初こそ楽しかったものの、続けて行くうちにだんだん慣れてきて「食べるの我慢するの辛いなぁ」とか「月会費がバカにならないなぁ」と思うようになりました。
すると次第に「トレーナーとウマが合わない」とか「運動して疲れて帰ると自分の趣味に当てる時間が作れない」とか、本来の痩せるという目的を忘れて「ダイエットをしなくてもいい」という理由になる事象を探し出してしまいました。
結果、見事に「ダイエットしなくてもいい」という目標は達成され、また一人、ダイエットをしない理由を正当化した人物が出来上がりました。(……心が痛いですね)
よくあることですが、この例は人間の脳の習性を理解するのに非常にわかりやすい事例です、恋愛でも仕事でも趣味でも、人間の脳は常に目標を達成しようと動いています。表面ではダイエットをしようと思っていても、内面で「めんどくさい」という感情が出てきていると、「やらなくてもいい言い訳を探す」という目標が優先され、脳はその目標達成のために動こうとするのです。
トラウマはどんな目標のために持ち出されるのか?
人間の感情は、強制力を持って世界に色眼鏡をかけます。不安な毎日を送っていると、不安な世界情勢が気になりますし、逆に楽しい日々を過ごしていると、楽しいニュースにしか興味が湧かなくなります。つまり、その「感情」でフィルターをかけられた世界しか見えなくなるのです。これは「意志」の力では到底太刀打ちできないほどの強力な力を持っています。
トラウマ発動時の脳内は、「不安や恐怖」といった感情で満ち溢れています。この時、どんなに強い意志で「素敵な恋愛をするぞ!」と思っても、この感情の強さには勝てないのです。
といった具合です。脳はあろうことか「傷つきたくない」という目標を達成するために、「過去の経験」を証拠に持ち出そうとするのです。これがトラウマの正体です。
あなたが自信が持てないのはトラウマのせいではない
ここで気づいて欲しいことは、あなたが体験した「過去」が自信を無くさせているのではなく、あなたの脳が発動した「不安や恐れという感情」が、自信を持たせないように画策している、ということです。トラウマの原因は過去になく、常にいまこの瞬間の感情にあるのです。
前置きが長くなりましたが、「トラウマを抱えているせいで自分の恋愛に自信が持てない」と思っているあなたに伝えたいことは、それは全くの誤解で、あなたは自分に自信がないと思い込んでいるからトラウマを抱えることになったんだよ、ということです。
冒頭で「脳は常に目標達成するための証拠集めをしている」という話をしたのを覚えていますか?ということはそれを逆手にとって、その目標をすり替えてあげることができるということでもあるのです。脳は割と単純なので結構簡単に騙されてくれます。
といった具合です。そもそもトラウマなんて脳が持ち出した根拠のない「言いがかり」です。「不安や恐怖」から導き出される目標を達成させるのではなく、過去の意味を捉え直し、未来につなげるための目標に切り替えてあげればいいのです。
ですからトラウマを克服する必要なんてないのです。
※筆者註
自分一人でその切り替えができない人は、病院に行くことをお勧めします。認知療法というれっきとした治療法があります。一人で解決しようとせずに、他人の力を思う存分利用しましょう。